作家志望の悪魔(未完) 2/2
二(六月八日)
彼はテトリスに夢中だった。その原因は2つ。
1つは、バイト先から合否通達の電話があるはずだからだ。
しかし、一向にかかってくる気配はない。
思い返せばその会社には不実極まりないことだらけではやくも不信感を抱き始めていた。面接では無意味に20分ほど待たされ、合否連絡は当初の予定から20日間も遅れている。
バイトとはいえこんな不誠実な扱いをする会社に、冷やかし目線の興味はあれど、尽くす義理などなくなるのが普通だろう。
しかし、彼は無職である。生活のためならば、あらゆるチャンスを拾っていきたい。それ故に、待つしかないのである。つまり、自宅でテトリスに夢中。
2つ目の理由は、晩飯のことだ。空腹なわけではないが、腹が減った頃に作り始めても手遅れなことを学んでいる。しかし、来るかもしれない電話を前に、意欲のない食事づくりは負担が大きい。
そんな2つの「タスク」を抱え、どちらもどうでもいいことながら、決断を下せずにいた。
さながら、恐ろしく容量の小さいパソコンである。頭の片隅にアプリケーションを常駐させているだけで、フリーズしたようなもの。
その現実逃避の結果ともいえる行為がテトリスなのだ。
「すべてにおいて、積み重ねては消える無常」など、にわか哲学にふけたところで道は開けない。
2回だけしか書いてなかったからこんなもんだけど、自分のしょぼいフリーター時代を記録しておくのもアリかなと。
『作家志望の悪魔』というタイトルは「作家志望という正当な理由を言い訳に怠惰な生活を続けることで良心や世間体を忘れ、悪魔のごとく腐敗した精神を醸成していく様子」をつづろうと企んでいたことに由来している。
まあ、今とさして変わらない。