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はなみずにっき

はなみずぐらいのブログ    コピーライター/脚本家

【短編シナリオ】100本目の浮気

○とある焼き鳥チェーン店(夜)
   楽しくイチャつきながら飲んでいる男Aと女。

 

○ある家(外観)
   Aが帰宅。

 

○同・キッチン
   Aが冷蔵庫にアイスを入れる。



[オープニング]



「おかえりー」
   妻(B)が風呂から出てくる。
A「うん。アイスあるよ」
B「うひょ、やったー!」
   A、目で追うが無表情。

 

○駅(別の日の夜)
   待ち合わせしてどこかに行くAと、二人目の女。

 

○Aの家(夜)
   Aが帰宅。
B「おかえりー」
A「アイス、いる?」
B「なに?」
A「さあ」
B「なんでよw」
A「いや、適当に取ったから」
B「(アイスを見ながら)いいじゃん。ありがとう」
A「うん」

 

○同・リビング(翌朝)
   テレビを観てるAとB。
B「え、神木くんってもう23歳なの!?ぜんぜん高校生じゃん!」
A「……(家庭でのAはすこぶるテンションが低い)」

 

○カラオケ(夜)
   女と遊んでいるA。

 

○Aの家(夜)
   帰宅してアイスを冷蔵庫に入れる。

 

○ショッピングセンター(夜)
   買い物して楽しく女と遊んでいるA。

 

○Aの家(夜)
   帰宅してアイスを冷蔵庫に入れる。

 

   というように、女(それぞれ別の人。複数回会っている人がいてもOK)と会っては冷蔵庫にアイスを入れるA。

 

         

 

○会社(外観)
A「え、俺ですか!」

 

○同・会議室
上司「ああ。お前も5年目だし、今回は任せてもいいだろう」
A「はい、わかりました!」
先輩「まあ、基本的に俺がバックアップするから、自由にやってみな」
A「ありがとうございます!」

 

○同・フロア
   会議室から戻り、自分のデスクに着くA。
   やる気に満ちあふれている表情。
   周りとのコミュニケーションも良好にこなす。自宅とはまるで別人。
   LINEの着信。
[ナオコ : 元気にしてる?]

 

○バー(外観)(夜)
   席で雑誌を読んでいる女。
   彼女の所まで行って座るA。
A「ひさしぶり」
女「ひさしぶり。ごめんね、急にw」
A「だいじょぶだいじょぶ」

 

         

 

   良い感じの雰囲気で飲んでいる二人。
女「でもすごいね、プロジェクトリーダーなんて」
A「いやまあ、今回は代理みたいなもんだけどね」
女「あれれ、顔付きが前会った時とはちがうような……」
A「んなわけあるかい、たった2週間前だろw」
女「まあ、責任の大きな仕事じゃないとなかなか成長できないからね」
A「そうそう。だからまあ、しっかりやりますわ」
女「うん、頑張ってね」
A「はーい。……お、締めた感じ?」
女「まーね。ほら、もうこんな時間だし」
A「どうしよっか、このあと」
女「ええー……ううーん(まんざらでもないような)」
A「とりあえず会計してくるね」
女「え、いやいや」
A「いいからいいから。プロジェクトリーダーですから」
女「うわ、かっこいいーwありがと」

 

○Aの家(外観)
   
Aがタクシーで帰宅。電気が消えている。

 

○同・キッチン
   Bは寝ている様子。
   Aがそっと冷蔵庫にアイスを2本入れる。

 

○同・リビング(翌日)
   テンション低く食事をしているAとB。
B「ねえ。1万円あったらさ。何欲しい?(だるそうに聞く)」
A「なんだろ。サイフとか?」
B「ふーん(別に目も合わせない)」
A「……(なにこの意味ない会話、みたいな居心地の悪さ)」

 

○会社・フロア
A「はい、その件に関しては一度こちらで確認してから改めてご連絡差し上げますので。はい。はい。そうですね。はい。よろしくお願いします。はい。では失礼しまーす」
   覇気を持って仕事をしている様子。
上司「ちょっと……」

 

○同・会議室
上司「例のプロジェクト。いったん保留になった」
A「え、なんでですか!」
上司「いちばんの理由は、納期を新商品リリースにあわせて延ばしたいからだと」
A「そうなんですか……、まあ仕方ないですね」
上司「で、いったん人員配置も見直すことにした」
A「え?どういうことですか」
上司「早い話、今のままでは先方が求めるクオリティには達していなかったと」
A「……!」
上司「企画段階から改めて精査して、外注の専門家にも協力してもらい、別案も含めてアプローチした方がいいだろうと判断したわけ」
A「え、ちょっと、それは……」
上司「で、今回のディレクションは規模も大きくなる分、経験者に委ねようということになった」
先輩「うん。別にお前の責任どうこうっていうんじゃないけど、今回はチームの一員としてサポートしてくれればOKだから」
A「……はい」

 

○同・屋上
   一服しながらスマホをいじっているA
   画面「いきなりゴメンだけど、今日会えない?」
   文面をコピペして3人の女性に送信。

 

○カフェ
Aと女が話している。
(女は少し気まずそう)
女「今日は何かあったんですか?」
A「あー、いやいや。別に何かあったとかじゃなくて、単純に今日会いたいなーって。はは」
女「……」
A「……」
女「……」
A「……あ、マユちゃんこそ何かあった?」
女「いえ、別に……」
A「そっか。いやごめんね、急に」
女「大丈夫……ですけど」
A「……」
女「……」
A「……何かあれか。もう出よっか」
女「はい」

 

   ※   ※   ※

 

   会計を済ませて出てくるA。
A「あの、もしアレならさ、このあと」
女「今日は帰ります。すいません……」
A「あそう?うん。だいじょぶだいじょぶ」
女「私、こっちなんで」
A「うん。じゃあね」
女「……(軽く会釈して去る)」
A「あの、ありがとね!」
女「……(ちらっと後ろを見て同じく軽い会釈)」

 

A、すかさずスマホを取る。
画面には女子からの着信や連絡先がずらっと並んでいる。
画面[今日はありがとう。何だか元気なさそうに見えたけど、心配(汗)俺で良かったらいつでも話聞くからね!]
メッセージを打った所で歩き出すと、すぐに返信がある。
画面[ごめんなさい。もう、会わない方が良いと思います。ありがとうございました。]
A、振り返る。
必死の表情で追いかけるが、見失う。
画面[どうしたの?ちゃんと話そう?]
送信するも、一向に既読はつかない。

 

○駅(夜)
   茫然自失のまま電車に乗るA。
   今にも泣きそうな表情。
   10人ぐらいいる浮気相手の女子のアイコンを、次々と削除していく。

 

○公園(夜)
   コンビニで買った酒を飲みながら、ベンチに佇むA。
   着信。
   本命の女子(さっきのマユ)からかと慌ててスマホを開く。
画面[B : ごはんは各自でお願いします。]
   がっかりするA。
   ついに本命の女子も削除。

 

○Aの家
   電気が付いている。

 

○同・玄関
B「おかえり」
A「うん」
B「ごめん今日、体調悪くて寝てたらごはんつくれなかった」
A「あそう」
B「何か食べてきたの?」
A「うん」
B「……うん」
A「あ、これ。ちょっと溶けちゃったかも」
B「おお、ありがとう。ちょうどアイスぐらいしか食べる気しなかったんだよね」
A「ふーん」
B「うま!」

 

○同・居間
   
Aはどこか虚ろな表情のまま着替えている。
   Bが奥の部屋から登場。
B「じゃーん!」
   小さな紙袋を持っている
A「……え?」
B「プレゼント!」
A「……え?」
B「うん。100本目だから」
A「……ええ??」
B「みてこれ。ほら」
A「……え?」
B「さっきのアイスで、ちょうど100本。(アイスの名前と日付が1本から100本まで記録されている)」
A「……(呆然としたまま、袋を開ける)」
B「だから、10000円分のお礼」
   中からサイフが出てくる。手が少し震えている。
B「いつもいつも、ありがとね」
   見つめ合う二人。
B「やば、溶ける!(と去っていく)」
   A、こみ上げてくるものを感じずにはいられない。
B「やー、しかし1年も経たないうちに100本てすごいねえ(無邪気に)」
   A、情けなさや後悔の念やBへの感謝に涙が止まらない。

 

[END]

 

B「いやいや、え、そんな!?」
   Aの涙でくしゃくしゃになった顔。
   何か意味深に思わせるBの笑顔。