【読書感想文】桐島、部活やめるってよ。
だっる、ヤバ。これマジで最高かよ。
クソ社会人なだけに、青春とか高校生活の甘酸っぱい描写っていうのは
ガンガン響きます。
特に、高校の頃が暗黒時代だった自分にとっては
手が届きそうで届かなかった現実の苦さがあって
ハートのえぐられ方がハンパない。
部活+恋愛+現実+自己嫌悪=青春
ですよね。
ストーリーとしては
「バレー部主将の桐島が部活をやめる」という話を軸に、数人の高校生の心情が描かれるもの。
青春とか思春期とか友情とか自我形成とか自己嫌悪とか、
まさに高校生活そのものって感じ。
文体もライトで読みやすいんですよね。
キャラクターが伝わる口語とか若さゆえの着眼点というか、斬新な表現というか。
関西弁っていうのもポイントでしょうな。
以下、心に残ったものをまとめます。
詩織の言う「おやすみ」は、文字にすると「おやすみ」だけど、意味合い的には「お休み」に聞こえる。本当はそういう意味なんだよな、ほんとは、と思わせてくれるやさしい声なのだ。
P55
志乃のほんのりとピンク色をしたくちびるを見つめながら、彼の名前をそのくちびるで呼ばないでほしいと思った。へーえ、応援するよ、と私は言った。口の中に残ったチョコレートの後味に、なぜだか泣きそうになる。
P61
どしたの亜矢、頭がおかしくなってまったのー、なんて詩織に言われてもいい、今日は真っ暗な空間の中にいようよ。傾いたゴールも茶髪もミサンガも、何も見なくていいような空間に、泣くな、私。
P76
人の目にさらされるってことが、僕は嫌いだ。嫌いになってしまった、というほうが正しい。僕はそういう場所に立ってもいい人間ではないんだということを、自分でというか、周りから知らされる形で実感した。
P82
上か下か。
目立つ人は目立つ人と仲良くなり、目立たない人は目立たない人と仲良くなる。目立つ人は同じ制服でもかっこよく着られるし、髪の毛だって凝っていいし、染めていいし、大きな声で話してもいいし笑っていいし行事でも騒いでいい。目立たない人は、全部だめだ。
P83
僕らは気づかない振りをするのが得意だ。
気づくということは、自分の位置を確かめることだからだ。
P89
本当は、世界はこんなにも広いのに、僕らはこの高校を世界のように感じて過ごしている。
P95
もうどう話しかけていいかもわからないし、きっと、話しかけたら駄目なんだろうと思う。
P97
カオリの好きなカレーは、私にとっては少し辛すぎるんだ。
P137
確かにここは進学校だけど、俺は別に医学部に進もうだなんて考えていない。できれば東京のそこそこの私立大学に行って毎日楽しく騒ぎたい。なんにも成し遂げられなくたって別にいい。俺はうまくやっているのだから。
P171
真っ白なキャンバスでも、真っ暗闇の中で見れば真っ黒だ。もう何も描けない。
P172
俺の彼女はかわいい。確かにかわいい。だけどたぶん、それだけだ。
P176
でもやっぱり黒が一番強い。
でもやっぱり、黒が一番強い。
P186
俺は一体何にイライラしてんだ? 何を振り返ってもイライラする、だけどなんでイライラしているのか、何にイライラしているのかよっくわかんねえ。聞こえてくる全てに、見える全てに、何だかイライラして、あーでもこんなこと考えてるけど、絶対、俺は、
P193
そうそう、タイトルは
「辞める」じゃないんですよね。
「やめる」なんですよ。
「辞」ていう字にはあんまりポジティブがイメージがないし
「部活を辞める」ていう一面だけじゃなく、
良いことも悪いことも含めた“変化”があるわけです。
高校時代特有のけだるさからスタートしてはいるものの、
前向きな解釈をして未来に進んでいこうという意志。
その行動や結果として表れた選択肢が「やめる」だったと。
ここも1つのポイントですね。
読みやすさ、共感性、若者特有の世界観などなど。
ライトノベルって人で例えると、なんだかチャラいじゃないですか。
完全な偏見だけどサッカー部とかハンド部みたいな。
でもこちらは、もうちょっとしっかりした頼もしさがあります。
生徒会長とかそういう堅さじゃなくて、陸上部とかバレーのキャプテンみたいな。
まさに桐島のイメージというか。
(伝わりづらいかな。。。)
てことで、ラノベに飽きた人にもおすすめです。